2008年1月30日水曜日

きえたくなる


「きえたくなったことがあります」

年始に先輩と会ったとき
ほろ、と出たひとこと。
「どう?最近」ときかれた返事だったと思う。
あの寒い夜でなければ
あのほろ酔いのあたまでなければ
あの整備された広小路のつめたいアスファルトの上でなければ
赤いブーツの似合うあのひとの前でなければ
出てこなかった声だった。

「ならきえてみたらええんちゃう?」
先輩は冗談みたいにそう言い放ったあと
ちょっとまじめな顔になって
たぶん一度いなくなってみたら分かるけど、
自分がいなくなっても案外仕事というのはまわっていくものなのだ
という話をしてくれた。そして
「自分がいなくてもまわりはそんなに変わらないってヤじゃない?」
と明るく笑った。
やっぱりこのひとはすごいひとだ、かなわないな、と思った。

わたしはきえるのをやめることにした。








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