2012年7月4日水曜日

地下鉄から届かない

地下鉄は苦手。

きいいい、と遠くで金属が金属をなでる音がする。
ドッドッドッ、ががががが、とあちこちで刻まれるリズム。
不規則な振動がからだをゆらす。

手元の端末は、もうずっと「圏外」を知らせている。

窓には薄暗い地底の風景が流れてゆく。
どこまでいっても湿った土の色だ。

ときどきガラスに薄く映る灰色の顔。
地底からこちらを見つめる自分の顔。

手元の端末は、もうずっと「圏外」を知らせている。



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いつか今の生活について振り返ったときに
思い出す風景のひとつ、なのかもしれない。