降るか降らないか分からないのであれば傘は持っていかない。
わたしはわたしのそういうところをどうにかしたいと思っている。
でも簡単には変えられないということを、
長年の付き合いの中で知ってしまっている。
○
さえない日曜日だった。
うれしいのかうれしくないのか分からない、
自分はなにをやっているのかと思うような予定がなくなり
それでも雨が降る中をただぼんやりと過ごした。
ここのところ窓を閉めたままであることが多く
(ひどいときにはカーテンもずっと閉めっぱなしだ)
雨の音や匂いにひどく鈍感になっている。
テレビをつけていても天気予報があたまに入ってこない。
自分には関係のないことみたいだ。
出かけようとして部屋のドアを押してからはじめて
「今日は雨か」と気づく。
部屋で部屋に散らばる本や雑誌を読んだ。ときどき眠った。
テレビもいいのをやっていない。
(そもそもきちんとチャンネルを合わせていないので、見られる番組は限られている)。
ネットもつまらない。
(毎日似たようなページを行ったり来たりしている)。
お香を焚いた。
先輩からいただいたフランス土産。
買ったばかりのお香立てを箱から出してセット。
つまらない雨の日にはお香を焚くことにしているの。
いい香りがして、わたしはそれだけで気分がよくなって
テレビを消してPCを落として、音楽をかけた。
○
夕方になって、転がしていた携帯が鳴った。
そうだ、朝、友達にメールを送ったのだった。
昨日の夜、レイトショーで観た『おくりびと』の感想。その返事だった。
彼女はとてもかわいいひとだ。
メールには可愛らしいことばと顔文字、絵文字がにぎやかに並んでいる。
文字にしても記号にしても携帯特有の絵文字にしても
同じ材料を使っているのに
どうしてこうも自分と違うのか、とわたしはささやかな絶望を味わう。
で。その返事にまた返事をしようとメールボタンを押してみたところ。
メールの画面に切り替わらない。
「初期化中」という表示がしばらく出て、またすぐ待ち受けの仏像写真に戻る。
何度押しても同じだった。
電源を落として再度挑戦してみてもだめだった。
じつは携帯はもうずっと調子が悪かった。
ついにもうどうにもならないふうになってしまったようだ。
出かけねばらならなくなった。携帯ショップに相談だ。
もう、どうしてわたしをひとりにしておいてくれないのか。
(ほんとうにひとりでいたいのなら携帯なんて必要ないんだけど)。
ゆるゆると閉店間際のショップへ。
データは保証できないとのこと。たぶんだめだということ。
電話帳だけは代替機に移した。
もういっそぜんぶ消してしまってもいいかな。
と、一瞬思ったけどやめておいてよかった。
わたしはまだ、みっともなく世の中にしがみついている。
代替機には、受信メールも着歴も写真も着うたも何も入っていない。
全部からっぽ。少しこころぼそくなる。でもすがすがしい。
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