忘れないうちにメモを。
もうだいぶ忘れてしまったけど。
予定日の2日前、明け方4時頃トイレに行ったらほんの少し出血していた。トイレットペーパーがうっすらピンク色になるくらい。「おしるし」というやつかもしれない。検索して、それがあったからといってすぐに出産というわけではない、一週間後になる人だっている、という情報を得てふとんに戻る。
朝5時頃に生理痛のような痛みで目が覚める。もしや陣痛。いや早まるな。陣痛と見せかけて陣痛ではない前駆陣痛なるものもあるらしいし、とまたふとんの中で検索するなどしていた。念のため、友達が送ってくれた出産体験メモを読み返して流れを確認する。
まだ痛い。とりあえず陣痛アプリをスマホのホーム画面の1ページ目に移動させた。痛くなったら記録、をくり返してみたらその間隔は4分~10分。ばらばらじゃないか。でも痛いのが波のようにくり返しきている。これはいよいよ陣痛みが増してきたと思い、いくつかメールやLINEを送って当日や週末の予定をキャンセルさせてもらった。
6時過ぎに病院に電話して状況を説明したところ、助産師さんから「様子を見て7時にまた電話もらえますか」と言われる。そっけない。あとで聞いたところ声が普通だったからまだだろうと思ったそうだ。
「陣痛かも」と夫を起こす。それから夫はシャワーを浴びて、着替えて、歯を磨き、ひげを剃り、髪を整え、朝ごはんにフルグラを食べカフェラテを飲み、PCを立ち上げて職場に連絡を入れていた。さすがに落ち着きすぎだろ。
7時にまた病院に電話し、とりあえず来ますかとのことなので準備。かばん3つ(助産師さんに渡すもの、陣痛室で使うもの、出産後の入院中に病室で使うもの)+抱きまくら(授乳クッション)。これでまだだったらこの荷物また持って帰ることになるのかなあとぼんやり心配する。
陣痛タクシー(自宅と病院の場所を登録しておいて陣痛時にすぐ呼べるタクシー会社のサービス)に電話すると、つながるまでにCMが流れたり、つながったらつながったで登録内容を一つひとつ確認されたりで、とにかく早くしてくれよと思った。
マンションの下にきたタクシーで夫といっしょに病院へ。8時前に到着した(ちなみに病院は家から徒歩10分くらい)。運転手さんに「元気なお子さんを産んでください!」と送り出される。
このときすでにかなり痛かった。これがあと何時間も続くとかやばいなと思う(初産婦は分娩に平均15、6時間かかるものらしい)。出産に3日かかったみたいな話も聞いたことがあったのでそんなの死んでしまうと恐怖した。
救急窓口から入って名乗ると守衛さんが「聞いてます」と通してくれた。エレベーターで産婦人科へ。ナースステーションに電話の助産師さんが待っていた。どうでもいいけど、すごい美人だった。
着いてすぐの診察で子宮口が7cm開いていると言われる。10cmで全開らしいのでこの時点でかなり進んでいたようだ。「お家でがんばりましたね」と助産師さんも驚いていた。
それからしばらく陣痛室でモニターをつけて横になって苦しんだ。ストロー付きペットボトルキャップ(友達からアドバイスされて妊娠の早い段階から用意していた)を使ってポカリを飲んだ。あとはベッドのふちの金属部分をさわってその冷たさで痛みをまぎらわせた。まぎれないけど。助産師さんが「ごはん食べますか?食べられないか」とポカリとウィダーインゼリーを持ってきてくれた。
大げさに呼吸。息を吐くときに声を出す。走っているときの終盤、限界の感じ。「痛くないときは普通の呼吸でいいんですよ」と言われたけど、ずっと痛いのでしょうがない。陣痛の波は「痛くない←→痛い」ではなくて「痛い←→とても痛い」を行ったり来たりした。
助産師さんが夫にマッサージしてあげてくださいと指示していたがそれどころではなかった。痛すぎて。事前に両親学級で出産支援アイテムとして教わっていた陣痛緩和椅子もテニスボールもうちわも使わなかった。
「いきみたくなったら呼んでください」と残し助産師さんがいなくなってからそっこーでナースコールを押した(たぶんナースコールを押したのはこのときが人生初)。痛みの波が引いたタイミングを待って(とはいえずっと痛い)歩いてとなりの分娩室に移動。
そこからは早かった。そのレバーを握ってとか息を止めてとか吐いてとか力を入れてとか言われた通りにやっていたら、もう産まれます、という雰囲気になって、分娩室にぞろぞろと人が入ってきた。スタッフが勢揃い。舞台のカーテンコールみたいだと思った。
9時に赤ちゃんが出てきた。「ハッピーバースデー」が流れて笑ってしまった。スタッフの一人が「ハッピーバースデー」ボタンを押すのを見た、と後から夫が言っていたのを聞いてまた笑ってしまった。